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森田忠明事務所

Author:森田忠明事務所
「玉鉾書院」(志士遺文・和漢古典等の学舎)を運営。機関誌「季刊ゐしんぴあ」発行。また「日本歌壇」(定例歌会毎月開催、会報「日本歌壇」)、「國民行動」(在野有志活動網 機関誌「國民行動」 、國風講座(國民行動主催)、「玉鉾奉仕団」(皇居勤労奉仕団体)、「大詔奉戴祭」「天長節を祝ふ会」の事務局担任。nippon@plum.plala.or.jp  http://ishinpeer.jp(準備中)
(写真=北岳より望見する富士)

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獨酌舒嘯

森田忠明事務所 【社稷廓清 草莽崛起】

■ 自助自彊の気概(下)

             
    自助自彊の気概(下)
  
         ── 改 稿 ──
 
           

急ぐべからず日露平和条約
 
 以下は、戦後の、どうしたわけか四島に限られた、日ソ(露)領土返還交渉史の梗概である。ゆゑにここでは、そのレベルにおける足跡に限定して俯瞰する。
 昭和三十一年(一九五六)の二島返還を取り決めた日ソ共同宣言のあと、日米安保改訂のためにソ連は解決交渉を打ち切り、領土問題は当初より存在せぬものだと豹変する。しかしその後、ここが肝腎なのだが、交渉過程がみるべき進展を伴つた事実を知らねばなるまい。
 ゴルバチョフ来日時、平成三年(一九九一)の日ソ共同声明は領土交渉史中、劃期的な内容を持つ。「四島の帰属問題」の存在に初めて言及したからだ。その二年後、細川・エリツィンの東京宣言第二項は一層踏み込む。
 ──両国関係における困難な過去の遺産は克服されなければならないとの認識を共有し、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題について真剣な交渉を行った。双方は、この問題を歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する。(傍線引用者)
 日ソ共同宣言の二島返還に較べて段違ひの様相を呈してゐる。爾後、この東京宣言が交渉の土台となつた。
 次いで同九年(一九九七)の橋本・エリツィンによるクラスノヤルスク合意、翌年橋本・エリツィンの川奈合意、その翌年森・プーチン署名のイルクーツク声明等等で日本は淡い期待感に酔つた。だがロシアとしては、「国境線確定を先送りして平和友好協力条約を先に結ぶ」ことで強奪側の国益を守りたいのが本音。
 この点プーチンはしたたかもしたたか、同二十一年(二〇〇九)、樺太で麻生と会談したメドヴェージェフに、領土問題に関し「新たな、独創的で、型にはまらないアプローチ」を提案せしめ、麻生が乗る。昨年五月のソチにおける安部・プーチン会談でも、安倍は「新しいアプローチ」、すなはち平和条約をまづ締結し、のち二島返還で手を打たうとの疚しい合意にのめり込んだ。
 ロシアは、クリミア半島強行編入の結果、欧米の経済制裁が祟つて国力の顕著な低下を見せ始めてゐる。日本の経済技術支援は垂涎の的、安部また領土問題で手柄を立てたい誘惑に負けた。両者思惑が一致して旧臘、鳴物入りで開かれたのが日露首脳長州会談といふわけである。
 KGB出身のプーチンは、一昨年の国連総会で「ヤルタ合意こそ世界に平和をもたらした」と自信をもつて語つたやうに、かねがね北方領土について、「日本に渡しはしない」「領土問題は平和条約締結とは無関係」と息巻いてきた。あながち国内向け言辞とは思はれない。かれの腹は、利益をちらつかせて日本に協力を強ひ、その殊勝な心に免じて四島の総面積のうち七%を占める歯舞と色丹を褒美とし、一層犬馬の労を取らせるにあらう。
 支那に対してのみ「法と正義」を口癖とする安部には、無類の策略家プーチンの片棒を担いで政経不可分の原則を無視、まづ二島を返還せしめて残りを将来の課題とし、戦後多年来の悲願をその程度に解決しておのが業績中に盛らんとする邪念が透けてみえる。要するに、何あらう「売国の花道」にほかならぬ。いや、さういつては身も蓋もなからう。安部は本格的に豺狼に変身せんとする膨張支那への懸念から、その支那とロシアとの間に楔を打ち込むとの腹づもり、日露防衛協力も日程にのぼせてゐる。
 問屋が卸すか。素人考へは往往にして国を誤る。かやうな場合の常で視野狭窄、木を見て森を見ぬ慢心に陥るのが相場だ。
 北方領土へ寄せる先人の祈願を足蹴にしてロシアに親近すれば、面白がらぬ米国は当然支那に接近し、当の支那は日米分断成ると北叟笑む。安倍にとつては、抜け目なきロシアの去就は思案の外でしかない。ただでさへ一筋縄でゆかぬ国際場裡のどぎつい駆引きを知らな過ぎる。まして老獪なる米露中相手の外交交渉に希望的観測なんぞもつての外。芽出たい安倍の外交音痴を尻目に三強国の思惑のみで推移せんか、もはや悪夢に魘されるしかあるまい。
 昨年十一月、国家安全保障局長の谷内正太郎が訪露の砌、会談した安全保障会議書記パトルシェフに対し、二島返還時の「米軍基地設置」の可能性を否定しなかつたとの報しきりである。ために師走来日に際するプーチンの硬化と、例の二度に亙る故意の遅刻が取沙汰された。谷内は、かの対北朝鮮交渉で暗躍した田中均に似る個人プレーが目立ち、甚だ胡散臭い。当然、安倍の走狗として下支への役目を担ふが、就任以来の前科に照らしても慨歎すこぶる深い。
 安倍は何を信じて夢を振りまくのか。北方領土の共同開発も、平和条約の先行締結も禁物だ。経済協力三千億円なぞ以ての外、幾十年幾百年かからうとも、正義に立脚する原則論を楯に、全領土を取り戻すべく、小手先の策を排しつつしつこく取り組むがよい。むしろ目下、もつぱら押しも押されもせぬ自力を蓄積する秋とは知らないか。
 政府の北朝鮮向け常套文句たる「対話と圧力」、とうに耳に胼胝ができてゐる。圧力を経済面の制裁とばかり心得てゐるやうだが、その一定程度の有効性あるのは承知するにせよ、窮極の断は武力を措いてはない。むろんそれを構築し、断然使用をも決断しうる気概の把持ともどもワンセットになつてゐる。拉致被害者家族がしばしば行ふ訪米の意味は、武断の背景を具有する米国への期待からであつて、これすなはち祖国恃むに足らずとなす悲観論の産物以外のものではない。
 国際関係におけるパワー・ポリティクスの現象は、なまなましく生きてゐる。人類が存続する限り消滅することはないだらう。政治の一つの達成目標は、「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため」に「我が国を防衛すること」(自衛隊法)にある。領土においても拉致事件においても、この任務の遂行は未だしだ。腑抜け政治による対話にも圧力にも、諸敵はせせら笑ふとも痛痒は感じない。まつたき武力の備へが急がれるゆゑんである。(森田忠明記)



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